【補助金の落とし穴(3/3)侮るなかれ!消耗品
かながわサイエンスパークは渋谷駅から25分ほどの場所にあり、スタートアップや多国籍企業の研究所などが入居している。
前回「Amazonでポチッたら大変!」から続く
―― 補助金(助成金)を充てたいなら普段サクッと買っている物ほど注意する、と理解すべきですか?
蒲池氏:その通りです。開発者個人が消耗品を、Amazon.co.jpやMonotaro.comで自分のクレジットカードで決済して買っている。これはありふれた日常です。でも補助金は公金。業者選定理由書を作ったり、サプライヤーに「費目ごとに」書類を作ってもらうことを忘れてはなりません。
―― 費目ごとに、とは?
蒲池氏:人はネット通販で送料無料に向けて何でも買い込みがちですよね。しかし一つの支払い明細書に三つの費目に掲載すべき選定品が混在している。こんな状態は、月別費目別明細表における記載忘れや二重計上を誘発します。少なくとも、資産計上する機械装置類と消耗品は必ず分けて買ってください。
蒲池氏:補助金の支給機関が消耗品費の利用実態を問うからです。補助金の充当が認められるのは、補助金の研究開発案件に使った分だけ。100個入りを買って10個を補助金の案件に使った場合は10個を対象に助成する、といった具合です。補助金の受給側は、使用簿(差引簿)にどの案件に何個使ったかを記録しなければなりません。
――カラ伝票やカラ出張によって補助金を不正利用した例があったそうですが、何をしたのでしょうか?
蒲池氏:もらった予算枠を使い切らなきゃもったいない、という軽い気持ちでやってしまう人がいるんですよね。過去に、証拠が残りにくいと思い込んで消耗品を大量に買って使い切ったことにする、外注先業者に多めに払って別案件の作業もしてもらう、といった手口がありました。しかしこれらは簡単にバレますよ。
―― カラ出張に関連して受給企業は特別なエビデンス(証拠)を提出しなければなりませんか?
蒲池氏:例えば航空機を利用した出張経費に補助金を充てるなら、搭乗券の半券か搭乗証明書が欠かせません。ほかは上場企業に勤めていれば想像の範囲内でしょう。つまり、出張毎に目的を記した出張計画書(命令書)や出張報告書を作成する。その上で自社の旅費規程に則りかつ一般的に見ても安価な費用を計上します。言うまでもなく各々の文書をしっかり書き込まなくてはなりませんよ。
蒲池氏:補助金を研究開発経費に充てる注意点はほかに幾つもあります。しかし、それを恐れるあまりスタートアップが大企業の規程をそのまま使ってはなりません。補助金処理に時間をとられて研究開発で他社に負けるリスクが高くなるからです。公明正大に公金を使った証拠を残す。研究開発に没頭しても、このことを決して忘れないでください。(終わり)