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株式会社ナノエッグ 山口葉子 氏

研究者も経営者も一緒。要は「選択と集中」

株式会社ナノエッグ
共同創業者 代表取締役社長 博士(理学)

山口葉子 氏

必要な疾患部分に、薬を効果的に直接送り込むDDS(ドラッグデリバリーシステム)の技術をいかし、ナノカプセル化(ナノエッグ)製剤の実用化、その役割の拡大展開に臨む株式会社ナノエッグ。
どんな薬も皮膚から浸透することを可能にし、世界から注射針を無くしたいという一途な思いで研究し続けてきた研究者の山口葉子氏はあるきっかけから経営者という二足のわらじを履くことに。研究者でありながら、ベンチャー企業を営むその行動力と精神力の源を伺った。

山口葉子 氏

起業後の実践が学び

起業したきっかけは?

私たちは薬が直接患部に働きかけるDDS(ドラッグデリバリーシステム)の研究技術を持っていました。DDSは一番実用化が見えている技術。その技術を使って、体に負担がなく効果に繋がる夢のような薬を作りたいという強い思いがあり、共にやっていた上司の先生と二人で、2003年9月に科学技術振興機構(JST)のプレベンチャー事業に採択されたことから始まりました。
研究はもちろんですが、実用化に繋げるためには、研究成果をアウトプットできる組織としてベンチャーを起業することが必須だと、3年の期限を待たずに2006年春、株式会社ナノエッグを設立したのです。

ご自身が代表取締役社長を務めることになりましたが。

自分は無理!とずっと思っていましたね。そもそも会社をどう作るかも知らなかったし、KSPのビジネススクールで起業について基礎から勉強です。
実験計画は作れますが、事業計画って?営業利益?経常利益?経営に関してはまったく素人。ビジネススクールでは、基礎学力を身につけた感じです。でも、本当に理解するというのは実践あってのものだと痛感しました。苦労に直面したときに、「ああ、こういうことなんだな」と。

「選択と集中」で前進

山口葉子 氏

起業されてからはどうでしたか?

薬の開発の研究に関し、ある製薬メーカーさんから共同研究の誘いがあり、いきなり大金が入ってきました。ビギナーズラックですよね。
ベンチャーの大成功例?的な思いで、化粧品原料の提供だけでなく、薬の技術を活かした化粧品の自社ブランドを立ち上げたんです。それが描いていたような順調な波ではなく、苦労の連続になりました。
私たちは研究者で、「売る」ことには所詮、素人なんですよね。ものが良ければ売れると研究者は思うんですが、それが失敗のもとでした。でもうまくいかない中で、転びながらも学び、その失敗があるから今に至っています。打たれ強く、前向きに物事を捉えられるようになりました。

どうやって立て直しを?

徹底的な節約と、売れるものに絞る見極め。辛かったけれどリストラもしました。これは本当に辛く、死にたくなるほど身につまされました。でも、この時に学んだのは「選択と集中」が要だということ。
これ以降、簡単に雇用しなくなりましたね。まだ誰も実現していない、ありえないような夢を一緒に見られる人でないと、ともに苦労を乗り越えながらの達成はできません。
「絶対これで成功したら世の中が変わる」というハートの共有が一番強いですから。会社がどん底になった時に残った今のメンバーの情熱と絆は強いです。

経営者、研究者として両立のバランスのとり方は?

経営も研究も「選択と集中」です。できないと思っていた経営も1~2年やって慣れてきたら、細かい内容は違っても、やることは一緒だと実感しています。
こうだ、ああだと考えてやって、出た結果を分析して、その結果を踏まえて行動。「plan・ do ・check・ action」で、まったく一緒。それを怠るとうまくいかなくなるんです。だから「できない」じゃなく「やればいい」だけです。
研究者もどんどん経営をやったほうがいいですね。私ができるんですから(笑)。
ただ、経営者として人の上に立つというのは、覚悟を決めて腹が据わっていることが求められますね。人の上に立つということは、人を踏みつけているわけで、それなりの人じゃないと立ってはいけない。覚悟を持っていてすごいと思える人に私はついていきたいから、私自身もそうならないといけないと思うのです。

「ぶれない強い信念」と「妄想」と「2、3歩ひく勇気」

販促の失敗を経て伸展中の自社化粧品
販促の失敗を経て伸展中の自社化粧品

山口社長の軸は?

難しいことをやるからこそ成功したときの達成感は半端ないですよね。それを味わうために成功体験を妄想しながらやり続けています。妄想することは実現するための活力になります。ちょっとバカみたいですが、大変な仕事ゆえそんな楽しさがないとつまらないですよね。
ただ、自分がやることは世の中にないことだという強い思い込みは必要ですが、その思いに執着せず、行き詰ったときは2、3歩ひく勇気も大事です。視野が広がると前進するための糸口が見つかりますね。そして、転ぶときは前向きに転ぶのです。(笑)

今後のビジョンを教えてください。

私には注射針を無くしたいという、変わらず一途な思いがあります。塗るだけでなんでも皮膚から浸透する。ということは皮膚の疾患から研究する必要があるので、難治性皮膚疾患と言われている研究も精力的にやっています。
自分の娘がアトピーで本人も私たち家族も苦しみました。経験ない人には理解できないほの辛さ。アトピーが異常に多い時代です。だから、絶対にこの研究は実用化させます。
まだ途中段階ですが、スタッフと力を合わせて成功し、私の会社は日本の大学発バイオベンチャーのお手本になると信じています。

起業家へメッセージをお願いします。

世の中にありそうだと想像できるものや、今あるものをちょっと変えて真似するくらいのアイデアならやめたほうがいいと思います。うまくいきません。
なぜかというと、そんなのものは誰かがきっとやってしまう、たいして難しくないからです。本当にうまくいくときやうまくいくものは「今世の中にないけれど絶対欲しい」「世の中を変えそうな」ものです。
イノベーションと簡単に口にしがちですが、本当はものすごいことで、世の中を震撼させるものを創り出すのがベンチャーの役割だと思うのです。大企業にはなかなかできないことであり、まさにベンチャーの心意気だと思っています。
ベンチャーやるのに自分の人生の夢をかけるか、思いの強さがない人はアントレプレナーとしてもうまくいかないでしょう。打たれ強く、後ろを見ない…私が知っているアントレプレナーに共通していることですね。

山口葉子 / Yoko Yamaguchi

山口葉子 / Yoko Yamaguchi

株式会社ナノエッグ
共同創業者 代表取締役社長

ダウコーニング株式会社、横浜国立大学大学院人工環境システム学に勤務後、聖マリアンナ医科大学難病治療研究センター先端医薬開発部門DDS研究室に所属。(現職)
科学技術振興機構プレベンチャー事業サブリーダーを経て、2006年4月に株式会社ナノエッグを設立。
代表取締役社長に就任、その後取締役研究開発本部長を経て、2011年3月より代表取締役社長に再任。ドイツBayreuth(バイロイト) 大学自然科学群(Prof.Dr.H.Hoffmann)卒業、理学博士。

■KSPとの関わり

JSTプレベンチャー事業を経て、共同創業者である五十嵐理慧助教授と山口氏が、創業前の2004年に第13回 KSPベンチャービジネススクール(現ビジネスイノベーションスクール)を受講しビジネスプラン最優秀賞を受賞

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