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株式会社インテリジェントセンサーテクノロジー 
代表取締役社長  池崎秀和 氏

ビジネススクールで学んだことを基盤に内なる価値観の変革を成し遂げよ!

株式会社インテリジェントセンサーテクノロジー
代表取締役社長
池崎 秀和 氏

「味のものさし作りで、社会に貢献」をスローガンに、世界的な先端技術で業界をリードするインテリジェントセンサーテクノロジー。
同社は世界で唯一、味認識装置を実用化し、従来、主観的で評価不可能といわれていた味を客観的に評価することに成功した。
目まぐるしく変化する世界情勢の行く末を睨み、現在は「味のものさし」による世界標準に挑み、食文化へのさらなる貢献を目指す。

30年以上にわたって味覚センサの研究・開発に携わってきた池崎社長に、これまでの転換点と今後のビジョンについて伺った。

すぐそこにある未来社会のために「味の標準化」で貢献する

御社の事業の特徴について教えていただけますか。

ひとつは、「美味しいものを食べて笑顔」ということですね。
ところが、現在、味に関する環境が大きく変わろうとしています。

このまま少子高齢化が進むと、2065年には高齢化率が40%にまで達すると予測されています。
それで、何が起こるかというと、味の多様化です。
例えば、高齢者が好むのは慣れ親しんだ「家庭の味」ですが、それは地方によって違う。大手コンビニは全国を9ブロックに分けてそれぞれの地方で好まれる味を提供していますが、それを今後、各県にしようという計画があります。
また、加齢とともにどのように味覚が変化するのか知るのは難しいことです。
さらに、これからは海外へどんどん進出していく時代です。
今までは「これが日本で一番おいしい味」を提供できましたが、それは通らなくなります。

つまり、これからはこれまでとは全く違うやり方が必要になります。
パラダイムシフトですね。
そこで、味覚センサを使って、それぞれの地方の味はどう違うのか、外国で好まれる味はどのような味か、あるいは加齢によって味の好みがどのように変化するのかを客観的に把握することができれば、それが味の確かな指標になるわけです。
それができれば、多様なおいしさにフィットした食品を作ることが可能になります。
そういう意味で、味覚センサはこれからの武器になると思っています。

もうひとつは、お子さんの薬ですね。
これは、製薬会社さんもご存知ないようですが、子ども専用の薬というものはほとんどないんです。
大人用に開発された薬のカプセルを割って、お子さんの体重に合わせて分量を決めますが、お子さんはカプセルを飲み込むことができませんから、砕いた大人用の薬を水に溶いて飲ませます。
ですから、飲むと非常に苦いんですね。もう2度と飲めなくなってしまう。これは、世界的な問題です。
そこで、味覚センサを使って「小児用の薬の苦味は、この基準以下にしましょう。」と決めることで、お子さんにも飲みやすい薬を作ることが可能になります。
弊社の味覚センサは、世界で唯一、味の定量化ができる装置として実用化されたものです。
今後は「味のものさし」、つまり味の単位の世界標準化を目指しています。それが実現すれば、多様な味の差が数値化でき、消費者がそれを基に食品を選ぶことができます。
これは、非常に重要なことです。

インセント 味覚センサー

インセント 味覚センサー


味覚センシングにはいつからご興味を持たれたのでしょうか。

30年以上前からです。大学院を修了し、アンリツ株式会社に入社後、研究所に配属されました。
そこでは自由に研究テーマを選ぶことができ、九州大学の都甲先生をご紹介いただき、味センサーの研究に携わることになりました。

御社の製品には、専門性の高い技術や知見が生かされていますが。

インテリジェントセンサーテクノロジー

インセント主催セミナー

九州大学の都甲潔 特別主幹教授との共同研究の成果です。
ラッキーだったのは、それが未開の分野だったことです。
ほとんどの分野では、原理が確立され理論も体系化されていますから、その最先端に行くには、脅威の勉強量が必要になります。
でも、味覚センシングの分野には研究の蓄積がありませんから、基礎から勉強するというより、創造することの方が重要でした。
これはラッキーでしたね。

ベンチャーとして創業されることになったキッカケは?

アンリツが味覚センサの研究開発をやめることになったんですが、そのときには既に試験販売して、お客様である食のプロとの共同研究も始まっていました。
相手はお客様であり、同志です。その食のプロが「これからは、数値化が必要だ」とおっしゃっていた。味覚センサを手放すのは忍び難かったんです。
それで、アンリツに事業譲渡をお願いして、会社を辞め、起業しました。

創業される時の周囲の方々のご反応はいかがでしたか。

親は、賛成してくれました。妻にも支えてもらいました。まだ小さい4人の子どもを育てながら、一緒に働いてくれました。



※ ここで、同社の味覚センサを使った味評価の一例として、コーヒーの測定事例をみてみよう。
 ≫ インテリジェントセンサーテクノロジー コーヒー特設サイト
 「コーヒーの測定事例  原産国×焙煎3段階」

 味覚センサによる評価をレーダーチャートで示せば、原産地と焙煎によって味がどう違うかが一目瞭然です。

最初は何も期待していなかった

ビジネススクール受講のきっかけは?

当時は経営が非常に厳しく、増資を考えていて、KSPの社長(株式会社ケイエスピー 大北 智良 前代表取締役社長)に投資のご相談をしたら、とにかくうちのスクールで学べと言われました(笑)

受講当時の御社の状況について、お差支えのない範囲でお話しいただけますか。

当時は創業8年目。債務超過ぎりぎりでした。開発に莫大な投資をした結果です。
装置に外注費2憶5,000万円を投資し、減価償却が毎年4,000万~5,000万円。
センサ開発のためにドクターも10人近く抱えていて、毎年赤字でした。
社内の部門同士も、人間関係も最悪でしたね。

ビジネススクールには、何を期待していらっしゃいましたか。

正直にいうと、最初はなにも期待していませんでした(笑) ビジネスプランはそれまで作ってきていましたし、賞をいただいたこともあります。
自分は開発と営業を引っ張ってきたという自負がありましたから、努力すればなんとかなると思っていました。
ですから、最初は結構、態度が悪かったんじゃないかと思います(笑)

受講中、楽しかったことと苦しかったことは?

参加者は、全員、必死でした。社長や部門長が多く、皆、悩みを抱えて参加していましたからね。
自分の会社の経営のためにと、とにかく真剣でした。
その切迫したドキドキ感が楽しかったですね。啓発されました。
とてもいい刺激になりましたし、経営に携わる者同士の連帯感も生まれました。

経営も大変なときに、スクールに参加するお時間はどうやって捻出されていましたか。

あの頃は、もともと寝ていませんでしたからね、スクールに費やす時間のことは、全然、気にならなかったです。
毎晩、3時、4時に家に帰って、8時には出社してました。残業が月に200~300時間。
今はもうやりませんけどね、一生に一度くらい、そんな時期があってもいいんじゃないかと思います。

学びはやがて価値観の転換につながった

失礼ですが、50歳を過ぎてのご受講ですね。大変、真摯な姿勢で学ばれていたと伺っておりますが。

学びは一生ものですね。死ぬ直前まで。その人が困っていなかったら学ぶ必要はないかもしれませんが、私は常に困っているので、学ぶ必要があります。ですから、学びに年齢は関係ないと思います。

当時、私には会社を運営するためにやるべきことがたくさんありました。それで、スクールでの勉強で吸収したいことがいっぱいあったんです。
このままだと会社がつぶれてしまうと、必死でした。社員が疲弊しきっていましたから。
課題があったので、学んで実践する。その中で自分がどうありたいのかを考えられるのがよかったと思います。

ビジネススクールを受講されて、ご自身に変化はおありでしたか。

自分は何も知らなかったと気づけたことは大きかったですね。
それまでは気合と根性でなんとでもなると考えていました。でも、実は、「なにかおかしい。苦しい。なぜだろう」と、もがいてもいたんです。

スクールで学ぶうちに、社長が阿呆では会社はだめになるということがわかりました。それでは、社員は疲弊して不幸になる。社長が変わらなければ会社はよくならないということですね。
会社をよくしようとしたら、社長が変わるしかないです。

社員の皆さんの限りある時間をどう使い、皆さんにどう役立ってもらうか。それを考えるために視点の置き方、ビジョンの描き方を改めました。「魚の目、うさぎの目、鳥の目」ですね。
もちろん、「鳥の目」で俯瞰することは必要です。でも、「魚の目」で目下の課題について現場で皆で取り組むこと、さらに「うさぎの目」で1年後、2年後のビジョンを描くことも大切です。
そうした視点で、ビジネスプランを立て直すことができました。

それと、プレゼンの練習を私だけ何回もさせて頂いて、すごくブラッシュアップになりました。
自分で気づかないところをさんざんダメ出しされましたが、それがよかったですね。

ビジネススクールを受講されての最大の収穫はどのようなものでしょうか。

価値観の転換につながったことですね。
受講後、東日本大震災が起きて、その影響で債務超過の危機を迎えました。運転資金がショート寸前で、倒産の危機。社員はどんどんやめていきました。売上の見込みが立たない。社内の雰囲気は最悪でした。

そこで、何のために、誰のために仕事をしているのか、何が大切かと自問しました。それまでは、売上を伸ばすことが全てでした。でも、改めて事業の目的は何かと問い直してみました。
その結果、それは、誰かのためにお役に立てること、社会貢献だということに気づきました。利益は目標であって目的ではない、と。
それで、役に立つことを決定してやろうと思いました。そのためには困っている人を探すことです。売り込みではない。

気が付けば、自分の周りに残っていてくれたのは、真面目で誠実な社員ばかりでした。彼らにこのことを伝えると、皆、理解し、賛同してくれました。
それからは社員もまとまり、完全黒字化、経営を建て直すことができました。
じっくり考えてビジネスプランを立て直し、今は全社全部門一丸となって、明日のための準備をしています。
こうしていい循環に入れたのは、会社の理念を見直すことができたからです。スクールで学んだことが、受講後数年たってからそこにつながったということですね。

会社の雰囲気はその後、どう変わりましたか。

今では、社員にどんどん意見を言ってもらっています。以前は自分の意見を最優先させて、社員の意見をつぶしてしまっていましたが、今では彼らの意見に耳を傾けています。もし私が暴走しそうになっても、きっと止めてもらえるでしょう(笑)

以前は、売れなければ怒っていました。私は自分で開発できる。そういう人間が営業すれば、結果はついてきます。アフターフォローもうまくいく。
それで、自分と同じようにできない社員の気持ちがわからなかった。社員の辛さが理解できず、いつもカリカリしていました。
そのうち、誰もついてこなくなりました。本当に申し訳ないことをしたと思っています。でも、今は社員の幸せしか考えていません。自分ひとりの限界を悟ったからですね。それからは明確に変わりました。皆の笑顔がいい。
時間がかかっても、皆で一緒になって考えることを丁寧にやっていこうと思っています。
遠慮や忖度なく自由闊達に話し合ってもらい、自分で気づいて自分で成長していってほしい。社長が社員を引っ張るのではなく、皆に活躍してほしいと思っています。

社員総出で取り組む展示会

社員総出で取り組む展示会


ビジネススクールでの受講は、現在、どのようなことに生かされているでしょうか。

先ほどのKSPの社長に教えていただいた「3つのアイ」に尽きます。

愛:社長は社員の幸せのために、社員はお客様の幸せのために働く。
I:社長は社員のために責任をとる。
Intelligence:社長は社員のために考え抜き、考え続ける。

これですね。
幸せになること、それが働くことの最終目的だと思います。
そのためには頭を使いまくらないとうまくいきません。思考には限界がありません。
考え抜いてそれでもだめだったら、し方ありませんが、心底ズタズタになっても諦めない。そんな心構えが大切だと思います。
その結果、私の幸福度はかなりアップしました。社員の幸福度も上がったと思います。

―今後の事業展開はどのようなものでしょうか。
味覚センサは味の定量化に成功した世界唯一の装置なので、これからの時代の変化に合わせてやり直していきたいと考えています。それには費用が必要ですが、コロナ禍で特別融資を受けることができましたので、開発に取り組むことが可能になりました。
研究を立て直し、2025年までには使い勝手のいい新機種を作るべく、全社的な取り組みを進めています。

インセント 実験室内

インセント 実験室内

ビジネススクールで学ぶ方へのメッセージにつながった

「学び」とはどのようなものだとお考えでしょうか。

先人をはじめ、さまざまな方々の生き方に学び、今度は自分が誰かのお役に立てるようにすることだと思います。学んだら行動、ですね。

これからビジネススクールを受講する方にアドバイスとメッセージをお願いいたします。

私の経験から言えるのは、受講したからといって直ちに変化が起きるわけではないということです。受講はあくまできっかけです。受講後も勉強し続けなければなりません。
私の場合は、受講後、自分の価値観が転換するという経験に恵まれましたが、その際、基盤になるものが受講中に得られました。

これからは人類がこれまで経験しなかったような、大変な時代が来ます。
世界中で高齢者が増加し、大きな変化が訪れます。秩序も変わります。多様性がトレンドになり、市場が豊かになります。
今後はそれに合わせてすべてを変えていく必要があるでしょう。
それは、脅威でもありますが、楽しみでもあるのではないでしょうか。

何のために学ぶのか、誰のために学ぶのか。学ぶ目的を明確にし、学びを生かして新しい世界を築いていってほしいと願っています。

最後にもう一言、どうぞ。

苦楽をともに 池崎社長夫妻

苦楽をともに 池崎社長夫妻

今、人生の優先順位は、「妻、子供らと社員(会社)、仲間」の順になりました。以上です(笑)


株式会社インテリジェントセンサーテクノロジー
設立日:平成14年1月30日
所在地:神奈川県厚木市恩名5-1-1
代表者:代表取締役社長 池崎秀和
http://www.insent.co.jp/


≫ 池崎社長が10年前に通った KSPビジネスイノベーションスクール 第30期生(期間:2021年7月~2022年1月)募集中
 



インタビュアー:横内 美保子
博士。元大学教授。総合政策学部などで准教授、教授を歴任。
Webライターとしては、各種統計資料や文献の分析に基づき、主にエコロジー、ビジネス、社会問題に関連したテーマで執筆、関連企業に寄稿している。
・Twitter:https://twitter.com/mibogon

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