再生・細胞医療分野支援

平成30年度 再生・細胞医療産業化連携プロジェクト採択企業 <メトセラ>

~ 「心不全」の治療に、革命を起こす! ~

心不全は心臓の機能が低下して十分な量の血液を送り出せなくなる病気です。世界中で数多くの患者さんがこの病気で苦しまれているにもかかわらず、根本的な治療法はいまだ確立されていないというのが現状です。

メトセラはこのような現状を打破すべく、独自のアプローチから心不全向けの細胞医薬品の研究開発に取り組んでいます。具体的には、心筋細胞を増やす働きを持つ線維芽細胞に着目し、治療効果の高い心不全治療薬の実用化を目指しています。当社の代表取締役である野上健一氏にお話を伺いました。

 
線維芽細胞で心臓を再生

メトセラは、2016年3月設立のバイオベンチャーです(図1参照)。2014年初頭にプロジェクトチームを立ち上げ、2年程度の準備期間を経て起業しました。

図1:社員の皆さん

当社の事業は、もう1人の代表取締役である岩宮貴紘(医学博士)の研究成果をベースにしています。岩宮は学生時代から心臓再生医療の研究に取り組んでおり、特に心臓線維芽細胞の研究に注力してきました。

心臓の線維芽細胞には、いろいろな種類があります。その中でもVCAM-1というタンパク質を発現する線維芽細胞を用いて心筋細胞と一緒に培養すると、心筋細胞を増殖させる働きがあることを、私たちは明らかにしています。当社はこのVCAM-1陽性心臓線維芽細胞(VCF)について特許を取得しており、現在、その製品化を進めているところです(図2参照)。

図2:心臓線維芽細胞の顕微鏡写真

成熟した心筋細胞は増殖しないことが広く知られているのですが、VCFを用いることで増殖しないはずの心筋細胞を増やすことができます。加えて、VCFを心臓に投与すると、リンパ管を新生する働きが活発になります。

最新の研究によって、心臓の再生とリンパ管の新生は強くリンクしていることが分かってきています。私たちのVCFを用いた治療における効果のメカニズムも、このような心筋細胞の増殖とリンパ管の新生の両方に作用することにあると考えられます。

 
VCFを用いた治療の特長

メトセラとは異なるアプローチとして、iPS細胞を用いた心臓再生医療の研究開発が進められています。このアプローチではiPS細胞を培養して増やし、それを分化誘導して心筋細胞を作製します。

ただ、iPS細胞の培養には特別な培地が必要になったり、培養に手間がかかったりします。また、分化誘導は効率が悪く、未分化の細胞を除去しないと、がん化する恐れがあります。さらに、他人の細胞を使ってiPS細胞は作製されるため、患者さんの体内で免疫の問題が生じて拒絶反応が起きるリスクがあります。

これに対し、私たちのVCFを用いたアプローチ(図3参照)では、VCFは増やし易い細胞であるため、培養が簡単です。また、分化誘導がないため、製造プロセスがシンプルで効率が良く、がん化の懸念もありません。さらに、患者さん本人の細胞から製造するため、免疫拒絶がなく、長期間定着させることができます。このように、私たちが製品化を進めるVCFによる心臓再生医療は、低コストで高い治療効果が期待できます。

図3:VCFを用いた治療のフロー

 
カテーテルを開発し、患者さんの負担を軽減

メトセラが開発を進める心不全の治療法は、VCFの患者さんへの投与についても新規性・独自性の高い方法を採用しています。

iPS細胞を用いた心筋再生治療では、手術により開胸して心臓に心筋細胞シートを移植するなどして、治療を行います。

これに対し、私たちはカテーテルのメーカーと共同研究を行い、VCFを心臓に投与するためのカテーテルを開発しています。患者さんの右足の付け根辺りからカテーテルを血管内に挿入します。そして、カテーテルを心臓まで送り、心臓の内側からVCFを投与します。

カテーテルを使用することで開胸手術が不要になるため、患者さんの体への負担を大きく軽減することができます。加えて、リアルタイムに心臓とカテーテルの状態をモニターで確認しながら施術を進めますので、心臓のダメージを受けた箇所にピンポイントでVCFを投与することができ、高い治療効果が期待できます。このカテーテルは既に開発できており、カテーテルメーカーと一緒に治験を開始するステージに入っています。

 
実用化に向け準備を加速

VCFの製造については、治験等に向けて少量生産できるよう、自社内で製造設備の導入・整備を進めているところです。自社でしっかりと立ち上げた後、大量生産する段階では、外部とも連携して製品を安定供給する必要があると考えています。

一方、VCFの効果については、げっ歯類(ラット)や大動物(ブタ)での確認を終えています。また、安全性についても、げっ歯類での確認を概ね終えています。

私たちは、ヒトによる効果や安全性の確認(治験、first in human(FIH)試験)を、2021年初頭にスタートさせる予定です。メトセラと筑波大学は、2017年に基礎研究や臨床応用に関する包括的な共同研究を開始しており、VCFの治験は筑波大学と連携して進めていきます。

そして、メトセラの心不全の治療薬と治療法を、早く患者さんへ届けたいと考えています。2020年代の実用化、それもできるだけ早期に実現させることを目指しています(図4参照)。

図4:ラボの様子

 
移植ではなく機能の回復

病気で亡くなる原因として、世界で一番多いのが心臓疾患です。毎年800~900万人の患者さんが心臓疾患で亡くなっています。そして、心不全の患者さんは、アメリカに500~600万人、日本に120~200万人いると言われています。中でも重篤な心不全では、心臓移植や補助人工心臓などが必要になります。例えば心臓移植は、日本では年間50件程度にとどまっており、簡単に受けられる治療法ではありません。

私たちが提供する治療法は、心不全が悪化する前に、「自分の心臓で生きられる体にする」ことを狙っています。VCFを患者さんの心臓に投与することで、心臓の機能を回復させる効果が期待できます。

 
モノづくりのプロセスを重視

私たちのようなバイオベンチャーでは、研究開発から治験へと創薬のステージが上がって行くにしたがい、人材の採用、資金の調達、製造スペースの確保など、さまざまな課題が出てきます。

このような課題を一つひとつ解決しながら、着実に前進していきたいと考えています。そして、「しっかりとしたモノづくりができる会社」にしていきたいです。品質の担保やコストの削減、あるいは改善といった基本的なプロセスを大切にして、それら一つひとつの積み重ねの先に医薬品の製造・販売があると考えています。

これまではスピード重視で事業活動を進めてきましたが、新たなステージへと移行しつつあります。医薬品を患者さんに提供するということは、人の命を預かっているということであり、エラーは許されません。しっかりとしたモノづくりをして、安全な製品をお届けしたいと考えています。

一方、メトセラの最大の強みは、自前で基礎研究を行うチームを持っていることにあります。私たちの再生医療技術は、心不全だけでなく、幅広い領域での応用が可能です。将来的には、心臓以外の臓器の治療も対象にした新しい医薬品を開発して、多くの患者さんにお届けすることを目指します。


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