東西サイエンスパークDAY開催報告
 

2022年4月20日、かながわサイエンスパーク会場およびオンラインのハイブリッド形式で株式会社ケイエスピー(KSP)と京都リサーチパーク株式会社(KRP)の主催による「第1回 東西サイエンスパークDAY」を開催しました。
東のKSP、西のKRPによる東西対抗戦をトピックとし、両サイエンスパークを代表する企業による基調講演後、スタートアップコンテストではディープテックやライフサイエンス分野で活躍する気鋭のスタートアップが3社ずつピッチを展開。観戦者182名による投票結果でKRPが勝利しましたが、その後の懇談会ではノーサイドで相互の健闘を労い、親睦を深めました。
 

本イベントは、2021年10月18日にKSP、KRP及び株式会社リヨンドの間で締結した三社連携協定に基づく初めての活動になります。
また、KSPの窪田社長は2021年6月に、KRPの門脇社長は2022年4月に就任したばかりであり、両代表者が挨拶として未来志向のメッセージを発し、新たな門出となりました。 これからも日本を代表するサイエンスパークとして、東西のスタートアップ・エコシステム拠点都市をつなぐ架け橋となり、世界を変える新産業・新ビジネスの創出を目指します。

開会挨拶/株式会社ケイエスピー 代表取締役社長 窪田 規一

株式会社ケイエスピー
代表取締役社長 窪田 規一

「イベントはやはり対面ですね、皆さんを目の前にして嬉しいです」

日本でベンチャーという言葉すら浸透していなかった33年前、ほぼ同時期に設立された東西のサイエンスパークは、それぞれ新産業の中核拠点として研究開発型ベンチャーや新事業に対するサポートを手掛けてきました。 世界各国でどんどんスタートアップが生まれ、ディープテックやDXなどのテクノロジーが高度化・複合化され、ビジネスのグローバル競争も一段と厳しくなっています。スタートアップをサポートするKSP・KRP2社も東西の力を結集して、インキュベーションクラスターを生み出していきたいと考えています。今回の第1回「東西サイエンスパークDAY」は、その東西交流の第一歩です。
株式会社ケイエスピー 代表取締役社長 窪田規一は、開会挨拶の最後に「KSPは、“この国の未来のために孫子の世代に美田を残す”というビジョンを掲げ、未来志向の理念も持ち合わせるベンチャーを強力にサポートしてまいります。先般発表した通り、100億円規模のKSP Next Generationファンドを創設して、ファンド機能を拡充しました。革新性の高い技術や知財を持つベンチャーへのさらなる支援計画を予定しています」と、今後の計画を紹介して意気込みを語りました。
 

 

感染症対策に配慮したKSP会場。
久しぶりの対面イベント開催に、関係者一同ワクワクしました。
会場の様子はYouTubeによるライブ配信で、オンライン参加者ともつながっています。

東西代表企業講演

今回のスタートアップコンテストに登壇する東西の3社を推薦したのが、
【東:KSP】アップコン株式会社 代表取締役社長 松藤展和氏と
【西:KRP】株式会社フューチャースピリッツ 代表取締役 谷孝 大氏です。
両社は東西チームを率いるリーダー的な役割を担っており、両チームとも登壇前にチームメンバーと拳を突き合わせるフィスト・バンプで志気を高めている様子からも、東西のチームワークの良さと熱意を感じました。やはりサイエンスパークで日頃から交流を深めている仲間ならではの人間関係です。
 

 
 【東:KSP】新市場を創出した沈下修正事業の海外展開を目指して

日本初の発泡ウレタン技術で建物構造物の沈下修正事業を手掛けるアップコン株式会社。創業時からKSPに入居し、2021年にはTOKYO PRO Marketに上場しました。創業当初は「そんなに床が傾いている場所などない」という声もあったそうですが、実は工場・店舗、道路・空港・港湾など、傾きに困っている需要は多く、東日本大震災による液状化などでさらに需要が高まり、新市場の創出に成功しました。
松藤氏は、「健康・安全・家庭第一を基本理念に、社会貢献度の高い研究・開発企業を目指しています。事業展開では、2019年ベトナムの企業とノウハウライセンス契約を締結したことを皮切りにアジア、潜在需要の多いヨーロッパや北米などの先進国へと海外進出を広げてまいります」と、今後の展望を語ってピッチを締め括りました。
 

【東:KSP】アップコン株式会社
代表取締役社長 松藤 展和氏

福岡生まれ・溝の口育ちの松藤氏は、2003年の起業と共にKSPへ入居しました。


 

 

【西:KRP】いまでもスタートアップの挑戦する心を忘れない

代表取締役の谷孝 大氏が、インターネット黎明期の大学生時代に起業した株式会社フューチャースピリッツ。現在は、ホスティングサーバー、パブリッククラウドの構築・運用から、クラウドサービス、Webシステムやサイト制作までを行う、150名の従業員を有する企業に成長しました。「入居当時のKRPは大学の下宿的な雰囲気のある中身の濃い交流の場だった」と、当時を振り返ります。
「コロナ禍のデジタル化の流れにのり、事業は大変好調で、今進行中の中期計画でも、大きな成長を掲げています。社歴だけみると一定の年数はたっていますが、いまでも気持ちは新しいことに挑戦するスタートアップの心を持ち続けています。これからもKRPと共に歩みたいと思います」と谷孝氏。
 

【西:KRP】株式会社フューチャースピリッツ 代表取締役 谷孝 大氏

2001年の入居前からKRP内のIT起業家コミュニティで盛んに交流していたそうです。

 
 

東西スタートアップコンテスト

東西サイエンスパークを代表するスタートアップ6社がピッチ(短いプレゼンテーション)を行い、東西チーム地区対抗で投票による総合結果を競い合いました。
 

 

【東:KSP】株式会社TAKUMO 代表取締役社長 岡村 均氏


「日本の製造業は、GDPの19.6%(2010年)を占め、いまだ重要な位置にあります。しかしかつての“日の丸半導体”は、いまや人材不足により凋落しています。当社では、日本の半導体・電子技術の開発現場を強力に支援すべく、DIYコンセプトによるWebベースのSaaSシステム“TAKUMO Sim-Base”を提供しています。チップから基板まで、設計に必要な無数かつ高度なノウハウとあらゆるモデルができるテンプレートをDB化して、クラウドに効率的に集約。AIで顧客の要求に応じてカスタマイズできます。専門家でなくても利用できるDIY SaaSビジネスモデル“TAKUMO Sim-Base”は、世界で初めて専門家数のボトルネックを打破しました。今後は、半導体、電子デバイス、アナログ回路、システムなどさまざまな分野のテンプレートをリリースして、2030年には1000億円の売り上げを目標としています」
 

【東:KSP】株式会社TAKUMO 代表取締役社長 岡村 均氏

DIYコンセプトによるWebベースのSaaSシステムで半導体開発現場を強力支援


 

 

【西:KRP】株式会社パーシテック 代表取締役 水尾 学氏


「当社は、IT技術を積極的に活用し、次世代の担い手育成を意識し、生産者視線で農業IoTに取り組んでいます。実家の父は、果樹農家として多くの受賞歴があり、高い評価を得ております。電子機器ハードウェア開発に従事していた私は、対局にある農業分野とIT技術が融合する時代に入ったと感じ、新しい農業スタイルを目指して起業しました。経験の少ない後継者育成とベテラン生産者の知見をつなぐための、各種農業用センサー・スマートグラスによる遠隔操作・ドローンによる環境観測などの農業IoTサービスを構築。またコロナ禍のリモート社会を追い風に、遠隔収穫体験などの体験型オンラインイベントを企画し、注目を浴びています。5年後にはネット農業体験型プラットフォーマーとしての展開を、10年後には一次産業全体に本サービスを拡大していきたいと構想しています」
 

【西:KRP】株式会社パーシテック
代表取締役 水尾 学氏

農業×IoTで次世代の発信型農業ビジネスモデルを創造


 

 

【東:KSP】株式会社コードミー 代表取締役CEO 太田 賢司氏


「私は大手香料会社でのフレグランス研究開発の経験をもとに、香りとITでワクワクする世界を創造したいと考えて起業しました。CODE Meee(コードミー)という社名には、香りとITの力で、世の中をアップデートするという想いが込められています。現在、パーソナライズされた香りのD2C事業と、企業向けのアロマ空間デザイン事業を拡大しています。当社のサービスの一つ『コードミーワン』は、AIとSNS連動で、自分だけの最適な香りをパーソナライズする世界初のシステムです。また、データに基づいたソリューションフレグランスの技術を用いて、音楽、エンターテインメント、医療、企業、自治体などの多様な業界と連携したオープンイノベーションを展開。いつでもどこでも、データに基づいた最適な凝りが寄り添う世界の創造を目指します」
 

株式会社コードミー
代表取締役CEO 太田賢司氏

香りとITでワクワクする世界を創造したい


 

 

【西:KRP】株式会社Space Power Technologies 代表取締役 古川 実氏


「当社は、2019年設立の京都大学発のスタートアップです。マイクロ波によるワイヤレス給電システム開発において、世界トップクラスの変換効率を誇っています。世界に先駆けて日本において導入されるマイクロ波ワイヤレス電力伝送の制度化に合わせて、まずは工場倉庫内のIoT機器などの完全ワイヤレス化を実現し、さらにはスマートデバイスへのワイヤレス給電も目指します。マイクロ波無線送電は場所を選びません。電力配線のない過疎地、被災地、宇宙空間など、使用シーンは幅広くあります。今後のロードマップとしては、5年後には有人エリアでの事業拡大、10年後にはオフグリッド構造物にエネルギーを与えてIoT化するサービス提供を世界で展開していくことを目指します」
 

西:KRP】株式会社Space Power Technologies 代表取締役 古川実氏

マイクロ波無線送電による真のワイヤレス社会実現へ


 

 

【東:KSP】株式会社日本バイオデータ 代表取締役社長 緒方 法親氏


「生物・生命関連データの捉え方が重要となっている今、解析のための解析ではなく、生物学者の視点からすべてのデータの持つ意味を探り当てるサービスを提供しています。細胞培養などの生物実験からシーケンシング、データ解析まで、次世代シーケンサーを用いた研究を行い、論文発表、特許出願の経験のある研究者によるサービスは、日本で唯一のものです。顧客と共同で仮説と解析による検証を繰り返す手法により、高い評価を得ています。どこまでも品質を追求して、データ解析と経済成長をつなぐ架け橋になりたいと考えています。 KSPは、自然科学や産技術系分野に特化した産業図書館が併設しており、霞ヶ関や羽田空港にも近く、ナチュラリストに嬉しい多摩川もあり、とても良い環境です。図書館で論文や社史を読んだり、自転車で温泉に行ったりしてKSPライフを楽しんでいます」
 

【東:KSP】株式会社日本バイオデータ 代表取締役社長 緒方法親氏

生物系データ解析のエキスパートとして、技術立国を目指す日本のエンジンに!


 

 

【西:KRP】株式会社糖鎖工学研究所 代表取締役社長 朝井 洋明氏


「2012年に大塚化学株式会社の子会社として設立して、今年でちょうど10年。化学会社からスピンアウトしたバイオベンチャーとして培ってきた18年間の研究開発が、当社の技術基盤です。糖鎖は、多くの生命現象に関わる素材です。構造的に利用が難しかった糖鎖を、安価で高品質な大量製造を可能とする当社の技術により、バイオ医薬品の製造を可能としました。 糖鎖修飾医薬品(糖鎖で修飾されたペプチド、タンパク質、低分子など)の自社開発の経験を活かして、医薬品開発各ステージでの最適なサービスをご提供して、創薬における独自のステータスを構築。今後も新しいタイプの創薬プラットフォーマーとして、個々の患者様の生活を改善し、社会全体に利益をもたらすことを目指してまいります」
 

【西:KRP】株式会社糖鎖工学研究所
代表取締役社長 朝井洋明氏

糖鎖修飾医薬品の自社開発で、新タイプの創薬プラットフォーマーを目指す

 

 

投票結果/表彰

すべての登壇者のピッチが終わると、会場の参加者およびオンライン参加者が、東西スタートアップグループのどちらが総合的に良かったかを投票。
結果発表までの休憩時間、オンライン参加者には、登壇スタートアップ各社ブースでの説明をライブ配信。
また、会場の参加者のうち希望者には、KSP館内クイックツアーを実施しました。

会場とオンラインからの投票 登壇スタートアップによる展示ブースでの説明

 

「東西サイエンスパークDAY」第1回スタートアップコンテスト東西対決の結果は、西に決定!


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満面の笑みでトロフィーを受け取る株式会社フューチャースピリッツの谷孝 大氏。

勝者メンバーには、優勝トロフィーと、株式会社リヨンド 代表取締役社長 川田 哲也氏から景品としてHOTEL ARU KYOTO宿泊チケットが手渡されました。

今回のイベントは「東西スタートアップコンテスト」と銘打っていますが、勝敗が問題ではなく、東西スタートアップが取り組んでいる事業内容や将来の展望を共有することで、東西交流の深化を図り、東西スタートアップ・エコシステムの発展に寄与することが最大の目的です。互いの活動を知ることで、刺激や交流のきっかけにつながったのではないでしょうか?
本イベントをきっかけに、さらに世界を変える新産業や新ビジネスが創出していくことを、主催者一同願っております。


登壇した東西8社および主催のKSP、KRPで記念撮影。
この時だけはマスクを外して、全員でカメラに収まりました。 互いを深く知り合う交流の場という意味でも、意義のあるイベントでした。 ここで芽生えた種が、将来どんな形で花開いていくのかが楽しみです。

開会挨拶/京都リサーチパーク株式会社 代表取締役社長 門脇 あつ子

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京都リサーチパーク株式会社
代表取締役社長 門脇 あつ子

「次回は、KRPで会いましょう!」

京都リサーチパーク株式会社 代表取締役社長 門脇あつ子氏が、「登壇企業の皆様、それぞれにストーリーや熱い思いがあり、個人的にも感銘を受けました。地区を越えて、思いのある人が集うことで何かが生まれるはずです。この場での新しい出会いが、新たな事業や活躍につながればと思います。来年度の第2回イベントは、京都で皆様をお待ちしています!」と閉会挨拶を締めくくり、記念すべき第1回東西サイエンスパークDAYは終了しました。
ご来場およびオンライン参加の皆様、登壇企業の皆様、多くの関係者の皆様、ありがとうございました。
 


 
 

開催プログラム

 

日時 プログラム  
13:30~13:40 開会挨拶 株式会社ケイエスピー 代表取締役社長 窪田 規一
13:40~14:00
14:00~14:20
東西代表企業講演

【東:KSP】かながわサイエンスパーク推薦企業
アップコン株式会社 代表取締役社長 松藤 展和 氏

【西:KRP】京都リサーチパーク推薦企業
株式会社フューチャースピリッツ 代表取締役 谷孝 大 氏

14:30~15:30 東西スタートアップコンテスト
※登壇順

株式会社TAKUMO 代表取締役社長 岡村 均 氏 〈KSP〉

株式会社パーシテック 代表取締役  水尾 学 氏 〈KRP〉

株式会社コードミー  代表取締役CEO 太田 賢司 氏 〈KSP〉

株式会社Space Power Technologies 代表取締役CEO 古川 実 氏 〈KRP〉

株式会社日本バイオデータ 代表取締役社長 緒方 法親 氏 〈KSP〉

株式会社糖鎖工学研究所 代表取締役社長 朝井 洋明 氏 〈KRP〉
15:30~16:00 休憩/投票

オンライン:展示ブース案内

会場:KSP館内ツアー
16:00~16:15

投票発表/表彰

 
16:15~16:25 閉会挨拶 京都リサーチパーク株式会社 代表取締役社長 門脇 あつ子
16:30~17:00   展示案内/名刺交換会
 
 
 
 
- 本件に関するお問い合わせ先 -

 京都リサーチパーク株式会社 イノベーションデザイン部  井上(良) TEL: 075-315-8491

 株式会社ケイエスピー インキュベート・投資事業部 水野 TEL: 044-387-6408

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