ロイヤルブルーティージャパン株式会社 代表取締役社長 吉本桂子氏

選んだ道で一流を目指す。それが「私ならではの仕事」に ロイヤルブルーティージャパン株式会社 代表取締役社長 吉本桂子

ワインとみまがう風格を持つ最高級の水出し日本茶…ボトリングティという全く新しいアプローチで、日本茶産業とノンアルコールの食文化のイノベ―ションに挑むロイヤルブルーティージャパン株式会社。お茶ながらも酒宴同様のくつろぎを満喫、心の豊かさに触れた体験をきっかけに「最高級緑茶生産で世界ナンバー1の日本」を目指し、ひたむきに走り続ける吉本桂子社長の情熱を伺った。

 

ノンアルコールの食文化をデザインする

―起業したきっかけは?

藤沢(神奈川県)にあった台湾の青茶(ウーロン)ティサロンで、「お茶で料理を楽しむ」会があり、友人の誘いで行きました。私はお酒が苦手なのですが、ノンアルコールでも外食のゆったりしたひと時を楽しむという心の豊かさに初めて触れたんですね。カフェでお喋りを楽しむティタイムとは違う、リラックス感と優雅なひと時。お酒を飲む人はこの感覚にお金を払っているんだと気づき、レストランの「レスト」(くつろぐ)という意味が理解できたのです。

当時、私はグラフィックデザイナーで、デザイナーの使命は、自分なりに様式を考えて、それをよりよい形で次の世の中においてあげること。自分にとってのデザインモチーフを常々探していました。お酒を飲まないこともあり食に関心がなかったのですが、ティサロンでの食事会の体感で「これだ!」と。

私と同様、外食の真の楽しみを体験したことがない人は多いですし、フードカルチャーのデザインという概念がピッタリ自分にはまりました。この段階では起業するなんて思いもよりませんでしたが、起業の源はここにあります。

―起業への意識転換は?

この体験がきっかけで、現在ビジネスパートナーである佐藤節男が運営していた、そのサロンに参画したのですが、2005年11月に藤沢市から、国土交通省主催の歩行者天国路上カフェの社会実験を依頼され、出店しました。

私たちが提案するのはノンアルコール派の人格を尊重した食文化を創る茶宴。路上カフェのスタイルにあっていなかったので結果は散々でした。でも、その発想に着目した藤沢市のインキュベートマネージャーから起業を勧められたのです。全く未知の世界なので、参考にしなさいと言われた湘南ビジネスコンペティションを見て、この程度なら私でもできると思ってしまった。そこから苦労が始まることに。(苦笑)

起業ノウハウどころか、世の中に起業家塾があるのも知らなかったので、審査員の鹿住倫世氏(専修大学の経営学教授・当時、高千穂大准教授)に、コンペ後に駆け寄って、エレベータ内プレゼンして「指導して下さい!」と。今思えば恥ずかしいですが、知らなかったことが強みだったかも。(笑)

エクセルも使ったことが無い私に手弁当で指導して下さり、半年間かかって事業計画作りました。ノンアルコールの食文化へのイノベーションを掲げ、2006年5月に藤沢市で創業。しかも事業資金ゼロのスタートでした。

―資金調達は?

創業した年に「かわさき起業家ビジネスオーディション」や「かながわビジネスオーディション」を受け、優秀賞や奨励賞を受賞し、そこで、運転資金や設備資金を何とか調達しました。
キャピタリストのほとんどに高級日本茶市場、ノンアルコール市場構想は理解してもらえませんでしたね。

川崎市から融資を頂くのに川崎市に本店があるのが条件のひとつ。困っていた時にKSPさんの存在を知りました。KSPの入居審査の方がコンペより厳しかったです。(笑)KSPさんからは創業時に出資、経営サポート、ファンド出資もしていただきました。それがなかったら前進できなかったでしょう。

 

 「もの」ではなく、喜びという価値を売る

―日本の高級手摘み茶に着目したのは?

HACCP開催の研修会で静岡に行ったときに、日本茶が斜陽産業になっている現状を知りました。ペットボトルなどの大衆茶を下段としたピラミッド型の上段、最高級茶葉のゾーンが空洞なのです。それぞれの食材に、特別な飼育や栽培による最高級ランクがありますが、素晴らしい茶葉の生産者さんがいるのに日本茶業界ではそれが確立されていないことに気づき、私たちが考えるノンアルコール食文化の変革とそのゾーンがマッチしたのです。

ロイヤルブルーティは最高級手摘み茶葉で水出し茶。ワインボトルに入っていて、色・香・味をワイングラスで楽しむ食中のお茶です。価格帯も3000円弱から30万円。世界の茶業界に対して革命イノベーションを起こすという試みのもと、採算度外視で開発した戦略的商品です。

1年間1万名に高級茶をふるまい、わかったことは、お酒を飲まない人もお酒を呑む人と同じように、リラックス体験をしたいということ。ワインボトルだから売れるのではなく、その豊かな精神体験に世の中のニーズがあるのです。ピラミッドの上段部分ができることにより、飲料業界全体の流れが活性化されるでしょうし、お茶の未来を変えられると確信しています。

―メーカーとして意識したことは?

安定経営のために業務用から始め、ブランディングを熟考し、一番最初の顧客を慎重に選びました。ロイヤルブルーティが目指すのは世界基準の「すごい」。世界的に共通する高級品質を保つバカラの直営バーに飛び込み営業し、今も変わらぬおつきあいをしていただいています。メーカーとして信用度を高めるのに目指すハードルを高く持ったというのがよかったと思います。国賓の晩餐会、首脳会議などでロイヤルブルーティが振る舞われ、JAL国際線のファーストクラスにも採用されました。

―起業後、大変だったことは?

2011年6期で黒字になるはずでしたが、震災で売上が半分以下に。日本茶の風評被害で、今まで築き上げてきたものが崩されかけたことが辛かったですね。日本茶は飲まない、高いもの買わないという疲弊ムードになりましたが、ポリシーを崩さず売り続けました。時間がかかりましたがそれによって売上と信頼を回復し、2012年4月決算で黒字になりました。生産地の絶大な信頼をえられたことは大きいですね。

 

夢と志 悔いは残すな 結果を残せ

―今後のビジョンを教えてください

煎茶と玉露は日本が開発したものです。最高級クラスは日本の上質な生産者ならではもの。ロイヤルブルーティを世界の高級茶ブランドとして確立させ、最終ゴールは「緑茶の生産世界一は日本」にしたいですね。

弊社の企業理念は「夢と志 悔いは残すな 結果を残せ」。

目標2~3年以内にロイヤルブルーティの旗艦店を出して、2020年には売上を10倍にのばします。

―自身の軸は?

他の人と比較しないこと。私がいる土俵で自分自身が持っている能力を最大限に活かせ、一流になるにはどうしたらいいかだけを考えてやれば、私にしかできない仕事になると思っています。
それから、世の中で起きていることで目に留まったものに対し、この現象は何なのかなという感覚で、先入観なく見ているから、これだと思える直感的なものに出会うのかもしれないですね。

―女性起業家の一人としてメッセージを

私自身は女性という視点で起業した意識がないんですよね。(笑)
ただ、言えることは、女性は生物学的に協和、協調の性質を持っているのでそちらに傾きがちですが、むしろビジネスモデルを明確にしたら自分の扱うその分野の一流を目指す感覚をもつこと。そして同じ夢と志をもつビジネスパートナーいる方がいいと思います。

ビジネスパートナーがいても、資金調達は一貫して自分でやる。それは金融関係との信頼関係にも繋がります。女性は趣味の延長でビジネス化が難しいと言われますが、速度を速めるには、できるだけいろんなライフスタイルを経験している人と接触することを勧めますね。あ、あとビジネスプランは相手がわくわくしながら読んでくれる書き方がいいですよ。(笑)

プロフィール

吉本桂子 / Keiko Yoshimoto

吉本桂子 / Keiko Yoshimoto

1971年神奈川県藤沢市生まれ。共立女子大学家政学部生活美術学科卒業後、フリーのグラフィックデザイナーを経て2006年に高級茶を自社一貫開発・製造・販売する「ロイヤルブルーティージャパン株式会社」を佐藤節男氏と創業。非加熱除菌による独自の茶抽出法を確立して商品化。翌2007年に「ROYAL BLUE TEA」を正式に発売した。

2007年から3年連続でベルギー・モンドセレクション金賞を受賞。
2013年には日本政策投資銀行「第2回女性起業大賞」を受賞。

KSPとの関わり

2006年創業時から、KSP並びに担当インキュベーションマネージャーの経営サポートや、KSPファンドからの出資

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