株式会社リブテック 代表取締役社長 中村康司 氏

人生の拡大は「やる」を選択すること - 株式会社リブテック代表取締役社長中村康司 氏

KSP内にあるKAST(神奈川科学技術アカデミー・カスト)発のバイオベンチャー、株式会社リブテック。 「幹細胞と癌」を研究開発コンセプトに抗体を創製、薬としての実用化をめざす。

「研究成果を知財化、実用化するためには当事者の自分がやらずして誰がやる」と起業を決意。 研究者畑に留まることなく踏み出した道には、未知の出会いや体験が生まれ、人生がダイナミックに動き出した。 実用化へ、波ある道のりを突き進む思いを伺った。

 

自分の卵は自分が孵す

――起業のきっかけは?

KASTで5年期限のブロジェクトに従事していた終盤の4年目に、知財化、実用化に結び付くスキームが必要だと思い、単に研究者としてのキャリア継続ではなく、起業を選択しました。

プロジェクトリーダーで、アメリカのベンチャー状況もよく知っている、東京大学分子細胞生物学研究所の宮島篤教授が、この研究成果をベンチャー化してみたらどうかという勧めもあり、また、日本ではバイオベンチャーブーム、ファンドもできた時期ということも後押しになった感じですね。

KASTも協力的で、KSPにはビジネスサポートやファンドもあるという恵まれた中で、こういうチャンスはそうないですし、当事者の私自身がやらなければこの成果が社会に貢献できる発展的なものにはなっていかないと思いました。失敗するときは早めの判断で誰にも迷惑のかからないうちに、と腹をくくり。笑

――起業のためにどう行動しましたか?

起業、経営のノウハウがなかったのでKSPのスクールをいくつか受講し、また、設立準備にあたり医学生物学研究所(MBL)の西田克彦会長(当時社長)に相談して、ビジネスプランの作り方を月1回勉強する機会を設けて頂きました。

プロジェクトが終わると同時に、ビジネスプランを作り、KSPの担当者から司法書士と会計事務所の紹介をうけ、2004年3月29日に会社を設立。資金調達にはビジネスプランを持ってベンチャーキャピタルをまわり、助成金申請などを重ね、mblVCの他、複数のファンドや、KSPからの出資、NEDO助成金など、3年分の資金が確保できたので、研究に専念できる状態になりました。

KASTのプロジェクトで使っていた場所と研究員3名もそのまま引き継ぎ、リブテックとして工学研究機器のリース継続など整えることができ、タイミングもよかったと思いますね。

 

信じることが強さを生む

――起業後はどういう流れでしたか?

5年間の研究蓄積から抗がん剤の抗体医薬開発プランとして認められた状況なので、LIV-1205というプロジェクトを開始し、抗体をつくるところから始め、実験を繰返しました。

肝癌に対する治療用抗体の元(リード抗体)になるものがとれるはずだと信じて続けて実験を重ね、設立2年半の2006年11月に特許出願できるデータパッケージングができました。

導出に時間がかかりましたが2008年2月に協和発酵キリン(株)にライセンスアウト。その時初めて会社として売上ができ、単年度で黒字になって、やっと会社になれたなあという実感でしたね。

その後、共同研究のスキームもできましたので、同時に新しいものを始めようと、2008年にLIV2008というプロジェクトを組み、上場を目指すのに管理系の取締役など人を増やしました。

――ターニングポイントは?

ライセンス活動もLIV-2008プロジェクトでは世界中の約80社の製薬会社を相手に、日本、欧州、アメリカを対象にとコンサルも3社と契約。時代が変わって、製薬会社も目が肥え、コンペチターも多く、厳しくなっているので時間もかかり、資金も厳しくなってきます。

2010年に入り、2011年12月までに契約ができなかった場合は私ともう一人を残して全員解雇かという状況に迫られました。半年ほど数名の社員に一時待機をお願いし、ギリギリの2011年11月に(株)ヤクルト本社とオプション契約を締結できましたが、結局長すぎたため戻る人はいませんでした。

このときが起業して一番厳しい思いをしましたね。

また、二つのプロジェクトを進め収入を得ながら、次の会社の戦略を予想していたのですが、ヤクルトと締結の同時期に協和発酵キリンと契約終了となり、上場も難しくなり、出資して頂いているファンドをどう返すか課題がある中で、コスト抑えながら、バックアップにとっていたものの研究を着実に進めています。

提携活動を始めており、強い関心をひいているので2014前半には新たなパートナーを見つけたいと思っています。

 

 起業は人生の道を広げる

――今後のビジョンを教えてください

2013年末に株式会社カイオム・バイオサイエンスの資本参加により、カイオムの子会社になりました。

両社とも抗体のベンチャーということで、カイオムは抗体をとるのに革新的なテクノロジーを持っていて、我われは、プロダクト、医薬品の元をつくるというデータパッケージングの会社なので、うまく事業上のシナジーができるだろうということで、会社として次のステップを踏み出しました。

この提携により、共同で行うプロジェクトも出てきますし、以前より加速して、薬の候補になるモノが複数出ているというようなバイオテックになっていけると期待しています。11年目を迎えるにあたり、災い転じて福となすという、いい展開になってきていると思います。

――起業する方にメッセージを

大変ですが、やってみると意外にできるものです。細かな株式のスキームはサポートしてもらえばよい。成果が企業価値になるための開発者、製薬会社と導出提携することが自分の役割なので、研究者が会社をやっているということは、全く違うスキルだとは思っていません。

私の基本的な考え方は、やるかやらないかと迷ったらやるほうを選択。それをやるためにはどういう条件をクリアするかということから考えるようにしています。

言えることは、起業しなかった場合と比べて、出会えた人、経験できたことが全然違いますね。

起業は、研究者としてだけでない別の道も広がるんだという実感がありますし、始めなければ無かったダイナミックな体験がある。そういう意味でも、やりたいことがあって、事業に絡むところで応援者がいるなら、やったほうがよい。

もうひとつ。最初は無名会社ですし、投資やライセンス関連など交渉の真っ向勝負は時間もかかります。どういうルートから攻めるか、どういう会社にアプローチしたらいいかなど、私は最初の入り口は抗体医薬のプロでネットワークが広い先生方の協力を得ました。それは無名ベンチャーへの信頼にも繋がりました。

プロフィール

中村康司 / Koji Nakamura (理学博士)
株式会社リブテック 代表取締役社長

1995年4月~1998年10月
ヘキスト・マリオン・ルセル(現サノフィ)研究員。

1998年11月~1999年3月
東京大学・分子細胞生物学研究所 研究員。

1999年4月~2004年3月
(財)神奈川科学技術アカデミー(KAST)にて幹細胞制御プロジェクトを研究。

2004年3月
(株)リブテック設立。

KSPとの関わり

2004年3月の創業前から、KSPが関与するとともに、KSP投資ファンドからの出資を受けた。
2007年に、第16回KSPベンチャービジネススクール(現ビジネスイノベーションスクール)を受講し、
ビジネスプラン最優秀賞を受賞