再生・細胞医療分野支援

平成30年度 再生・細胞医療産業化連携プロジェクト採択企業 <大阪サニタリー>

~ ベンチャースピリットで最先端医療分野に参入 ~

大阪サニタリー株式会社は、食品や飲料、医薬品の生産に不可欠なサニタリー製品を開発・生産するものづくりの老舗メーカーです。当社は、配管用のパイプ、継手、バルブ、ポンプ等のサニタリーパーツを始めとする、食品・飲料・医薬品向けのプラント設備を製造・販売しています。そんな大阪サニタリーが、近年、最先端医療分野の技術開発(細胞にストレスをかけず安全にかつ大量に培養する技術)に挑戦しています。当社の取締役技術本部長である柿崎良哉氏にお話を伺いました。

 

サニタリーパーツやプラント設備を開発・生産

大阪サニタリー株式会社の前身である大阪サニタリー金属工業協同組合が設立されたのが1969年、今年は組合設立50年の節目の年に当たります。設立当時は大手ビールメーカーが生産設備の刷新に取り組み始めた時期で、銅製の醸造設備をステンレス製へ切り替える作業が進められていました。このような中、当社はビール工場の生産設備の配管を銅製からステンレス製に切り替えるための部品の製造に着手し、事業をスタートさせました。尚、弊社は組織改編により、2014年に事業協同組合から株式会社へ変更しています。

現在当社は、「食の安全・安心を担うサニタリー技術を通じて、より安全・安心な食文化の未来、次世代医薬分野の未来に貢献ができる企業を目指す」という経営理念を掲げ、サニタリーパーツの製造やプラント設備の設計・施工などの事業を展開しています。サニタリーパーツ事業では、各種のパイプや継手、バルブ、ポンプ、シールレスミキサー、タンク等を製造・販売しています(図1参照)。また、プラント設備事業では、食品、飲料、医薬品の各工場向けのプラント設備(例えば、脱気装置、濃縮装置、調液装置、高粘度液自動調製装置、殺菌装置、CIP装置など)を、お客様のニーズに合わせて開発・設計し、製造から施工、試運転までを行っています。例えば飲料では、ビール、ジュース、お茶、ミネラルウォーター、牛乳、乳酸菌飲料等を大量に生産するための設備を提供しています。


図1:サニタリーパーツのラインアップ

このほか、新規事業としてクラフトビール事業を手掛けており、醸造設備・醸造システムの設計から設備の導入、免許取得、原材料の入手、レシピ開発まで、お客様のクラフトビール開業をトータルにサポートしています。この事業は、比較的小規模に独自のオリジナルビールを造りたいというお客様を対象にしています。当社には大手ビールメーカーOBの醸造技術者が在籍していますので、ビアマイスターとして、クラフトビール造りに必要な知識やノウハウをお客様にアドバイスすることができます。

 

細胞に優しい3つのコア技術!

大阪サニタリーは、2014年にFIRM(再生医療イノベーションフォーラム)の正会員になり、再生・細胞医療の分野へ参入しました。そして、2016年には川崎市殿町のライフイノベーションセンターに入居し、再生・細胞医療の産業化に向けた研究開発を本格的にスタートさせています。これは、社会的な背景として再生医療による希少難病治療への期待が高まる中、私たちが食品・医薬品業界で長年に渡り培ってきた、酵母菌や乳酸菌などをリアクターで培養し、安全にかつ大量に増やしていくという技術をヒトの細胞に応用することで、世の中のお役に立てると考えたからです。

当社には、安全かつ大量に細胞を培養するための柱となる『3つのコア技術』があります。1つ目は、攪拌翼のない無せん断攪拌システムです。培養液の攪拌に羽根を用いないため、液中を浮遊する細胞を傷つけることがありません。培養プロセス(誘導期・対数増殖期・定常期・死滅期)に合わせ装置内の環境を常時モニタリングしながら制御し、環境によって時にはストレスを与え、細胞による異なる回転や振盪を加えることで攪拌翼を使用せずに攪拌していくと、細胞の培養環境を常に良好に保つことができます。

2つ目は、ローターのない無せん断送液システムです(図2参照)。左右2つのヘッドを連動させて加圧と減圧を繰り返すことで液を送り出す、独自の機構を採用しています。培養液を送るためのポンプに羽根状の回転子を用いないため、液中の細胞を傷つけることがありません。


図2:無せん断送液システム

3つ目は、細胞を傷めることなく凍結し解凍する技術です。食品業界には、例えば魚の刺身のような食品を傷めることなく、瞬間的に凍結し、ゆっくり解凍する技術があります。当社はこの技術を応用し、培養した細胞にストレスを与えることなく、保管・輸送して創薬などの現場にお届けすることができます。

 

独自技術で細胞培養装置を開発!

図3は、大阪サニタリーが開発した細胞培養システムのパイロットプラントを示しています。庫内の温度、湿度、酸素や二酸化炭素の濃度を調整できる市販のインキュベーター内に、無せん断攪拌ユニットを3〜6台搭載することが可能です。


図3:細胞培養装置(パイロットプラント)

このような装置を用いてADSC(ヒト脂肪由来幹細胞)を培養し、その結果を評価したものを図4に示しています。図の左上の折れ線グラフは、10日で細胞が5倍に増えたことを示しており、ただ増えるのではなく、培養結果にばらつきが少なく再現性が高いという特長があります。また、左下の棒グラフは、培養した細胞の質を遺伝子レベルで評価したものを示しており、従来のディッシュで細胞を培養した場合に比べ、マーカーによる数値が常に安定した再現性の高い状態で、かつネガティブ要因が低くポジティブ要因が比較的高いという結果が得られていることがわかります。


図4:ADSCの培養データー分析結果

 

iPS細胞の大量培養システムの実現を目指す

商業プラントにより細胞を大量培養するに当たっては、当社がこれまで食品メーカー向けに開発してきた、酵母菌や乳酸菌の培養設備、健康食品やゼラチンの製造設備に関する制御技術を応用できます。一方、今年中には細胞培養装置の制御システムを完成させる予定です。培養装置の運転や庫内環境のデータを、クラウドを利用してリアルタイムのデーターを収集・分析し、それをリアルタイムにフィードバックして装置を制御することで、細胞の培養を効率良く行うことができます。 商用化に向けた課題としては、細胞を培養するためのコストを下げる必要があります。コストが下がれば、治療薬の開発が加速し、結果として多くの患者さんに希望を持って頂くことができます。しかしながら培養装置のコストダウンだけでは不十分で、培養プロセスにかかるコストの削減、培地のコストダウンのための培地メーカーとの協業などにも取り組んでいきます。

今後は間葉系幹細胞の培養に取り組んでいきますが、課題は山積みでまだ道半ばではありますが、将来的にはiPS細胞を条件付きで安全かつ大量に浮遊培養する技術を確立したいと考えています。

 

食と健康の未来に貢献

私たちが展開する事業は、食の未来と医薬品の未来の両方にかかわっています。食は健康の源でもありますので、設立50年の実績を踏まえ、食品業界や飲料業界にさらに貢献していきたいと考えています。また、私たちが培ってきた技術やノウハウは、医薬品業界へも応用が可能です。保有する技術開発力を最大限に活かすことで、難病の治療薬開発などの現場に貢献し、QOL(生活の質)の向上に一役買いたいと考えています。

我々のビジネスは現在、図5のような好循環を生んでいます。食品・飲料業界で培った技術は、医薬品や先端医療のプロセスに応用することができますし、そこで培った最先端の技術は、再度食品・飲料業界へフィードバックすることで、そこでまた新たなビジネスを生んでいます。


図5:弊社事業としてビジネスの循環が成立

我々の事業を通して、弊社社員の皆さんを豊かにしていくことも、また私たちの大事な目標の1つです。これからは若い有能な人材にどんどん弊社へ入社して頂き、未来の大阪サニタリーを担っていただければ嬉しいですね。

 


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