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動物アレルギー検査株式会社 増田健一 氏

明確な使命は信念と成功を導く

動物アレルギー検査株式会社
代表取締役社長 獣医師 獣医学博士

増田健一 氏

犬が持つアレルギーを根治するための検査システムの提供を始め、最先端の研究成果を社会に還元する理研ベンチャー「動物アレルギー検査株式会社」。獣医となった後、獣医療法の現状に直面。医学に比べ、まだ幼い獣医学の世界を飛躍させる使命感をもって2007年に起業した。いつも自分の人生を監視し、問いかけ、突き動かすのは8歳の自分だという増田健一氏。経営強化をしながら、着実にコマを進める、ぶれない精神の源を伺った。

増田健一 氏

ゆるぎない使命感を持つ

起業のきっかけは?

一番の目的は「病気の動物を治す」ためです。

獣医として3年間の動物病院勤務中に国内の獣医学の限界を感じ、「治す」役目として、より知識を高めるためにアメリカのイリノイ大学に留学し卒業しました。でも私が目指すラインに達するにはやはり自分で研究するしかないと、さらに東大の博士課程に進んだのですが、医学に比べて獣医学は未熟なんですね。

また発展の限界がみえたときに、理化学研究所の免疫中心のセンター新設メンバーに声がかかったんです。トップの免疫学者がたくさんいるところで、新しい知識を得て、特許のシーズも見つかったので、自分がやっているアレルギーの研究で犬のアレルギーが治せると判断し、起業しました。

8歳で将来獣医になると決めていたそうですね

飼っていたセキセインコが病んだ時、どうしていいかわからず、ただ死んでいくさまを見ていることしかできなかったんですね。その後、動物病院の存在を知り、獣医さんなら治せたんだ!と。その気づきが強烈なインパクトで、将来獣医になることを決めました。動物の病気を治せる世界を創るのがその時からの自分の使命なので、誠実にやっているか私の人生を時々8歳の彼がチェックしています。(笑)

会社は気づきを与えてもらう修行の場

増田健一 氏

KSPとの出会いは?

理研に勤めて1年目に、KSPさんが研究者畑からの起業家を募る目的で開いた説明会があったので参加しました。その翌年にビジネススクール(現ビジネスイノベーションスクール)に通いました。大学卒業後獣医と研究者畑でしたから社会のルールを全く知らなかったですし、起業や経営について学んだときに正直、自分にはできないと思いましたね。(苦笑)

ただ、私のもう一つの使命は獣医学の大学を創ることで、資金面や土壌づくりのためには起業しか方法がないですから、一念発起しました。

起業するにあたりどう動きましたか?

理研の研究成果を技術として世の中に提供する「理研ベンチャー」という制度のもとで起業したのですが、他にKSPさんからのファンド出資、エンジェルからの投資で資金調達しました。

創業時は、創業者の一社としてKSPの方が役員に加わりました。必要なことが必要なタイミングで進んでいった感じです。自分のミッションが明確だったからなのかわかりませんが、起業に向けて応援してくれる人が周囲に増えていき、流れを作ってくれたといってもいいほどです。

設立前年にノースカロライナ州立大学の獣医学部に客員研究員で行かなければならず、その間、スカイプを使いながら、日本にいる人たちが起業準備を進めてくれました。

起業してよかったことは?

大学は研究費がとれない年は継続的な研究ができなくなってしまいますが、自分の会社なら徹底的に研究を続けられるのは嬉しいことです。

それから、会社で妨げの一番が自分自身だと気づいたこと。つまりプライド、自己主張の強さは無駄なエネルギーです。頭ではわかっていることでしたが、本当に腑に落ちたとき、自分が経営者としてどう振る舞えばいいか冷静に考えられるようになりました。

ベンチャーをやると、一番いいことは自分が変わるということですね。昔の自分のままではいられない。そういう意味でも、会社は自分自身に気づきを与えてもらう修業の場と思えばなにやっても苦労じゃないですね。

自分がなんのために生きているか、天命を問う

ナノベシクルカプセル技術を取り込んだフィルム
ナノベシクルカプセル技術を取り込んだフィルム

今後のビジョンは?

起業のもう一つの命題は、獣医大学の創設。今の閉鎖的な獣医学の教育を変えないと、次が育ちません。私自身、獣医学では未熟な免疫学を理研で深められたことが飛躍になったので、教師陣は従来の「獣医師資格を有する者」という枠ではなく、医学部や理学部の先生など幅広い方がいいと思っています。

創設に向けて、まずは会社が安定することが前提で、今はドッグフード、ワクチンを作る研究開発にシフトした第二ステージに入り、着実に大きくなりつつあるという実感があります。大学を創るには文科省や国の政策にも関わってくるので、こちら都合ではいきませんが、タイミングが来た時にすぐ動けるよう、現実面を整えておくことに専念しています。研究者魂、ノーベル賞を狙うというミッションも忘れていません。博士号を授与された人はきちんと社会に還元できるよう最高峰のノーベル賞を目指さないと。(笑)

起業する方にメッセージを

大金持ちになるための成功という意識だけでは長続きしないでしょうね。起業して世の中になにかを提供するような使命を受けて生きていると感じたら起業したらよいでしょう。天命のように思ったら、お金も人も集まる流れがきます。自分がなにをするために生まれてきた人間かを自問自答したほうがいいですね。これを問えばその先にいくら恐怖感が生じても、天命を達成するよう生まれているのだから絶対成功に導かれると思えます。

一番単純な質問をしてみるとよいですね。「自分はサラリーマンに向いていますか、向いていませんか?」。向いていなければ起業したほうがいい。(笑)私は迷うと「なんのために起業したのか?」原点を問いかけ、「大学創設するんだった。それなら我慢しよう」と自分の中で完結しています。

増田健一 / Kenichi Masuda

増田健一 / Kenichi Masuda

動物アレルギー検査株式会社 獣医師 獣医学博士
代表取締役社長

1992年 鹿児島大学獣医学科卒業 獣医師
1997年 米国イリノイ大学大学院 修士課程修了 獣医学修士号取得
2003年 東京大学大学院 獣医学博士号取得
職歴
1992年―1995年 動物病院勤務
1999年 東京大学大学院 獣医内科学教室 助手
2004年 独立行政法人理化学研究所 免疫・アレルギー科学総合研究センター 研究員
2006年 米国ノースカロライナ州立大学 獣医学部 客員研究員 兼任
2007年 理研ベンチャー 動物アレルギー検査株式会社 設立 (代表取締役社長に就任)

■KSPとの関わり

2005年 KSPベンチャービジネススクール(現ビジネスイノベーションスクール)を受講
2007年起業時にKSP投資ファンドからの出資・KSPスタッフ役員参加


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