再生・細胞医療分野支援

平成30年度 再生・細胞医療産業化連携プロジェクト採択企業 <クレオ・バイオサイエンス>

 ~ 希少がんの治療に光を ~

クレオ・バイオサイエンスは、「適切な治療法の無い難病の患者さんへ、効果的な診断法や治療薬をお届けしたい」という思いから、2013年に設立されました。当社は、独自の「細胞の3次元培養法」を開発しており、希少がんの診断技術の開発を進め、新薬の開発も視野に入れています。4年後の株式公開を目指すバイオベンチャー、クレオ・バイオサイエンスの代表取締役である岡本将氏にお話を伺いました。

 

「Body on a Chip」の実用化を目指す!

私たちがクレオ・バイオサイエンスを設立した当初から注目しているのが、「Body on a Chip」と呼ばれる技術です。この技術では、プラスチックのチップの中でヒトの臓器や病気のもとになる細胞を培養し、そこに薬を投与して薬の効果や副作用を調べます。具体的には、チップ上に複数のくぼみや溝を設けてマイクロ流路を形成します。例えば、1つのくぼみではがん細胞を培養し、別の個々のくぼみには心臓や腎臓の細胞を培養しておき、流路の上流から薬の候補物質を流すことで、がん細胞は破壊するが、心臓や腎臓の細胞を傷めないなど、その効果や副作用を人体に近いモデルで確認することができます。

2014年に京都大学がマイクロ流体デバイスを用いたBody on a Chip技術を発明し、特許を出願しています。2015年には、当社は京都大学と特許独占実施契約を締結し、Body on a Chip技術の実用化に向けた研究開発を始めました。

 

希少がんの治療に着目

がんを発症する人は年間100万人と言われており、肺がん、大腸がん、胃がん、肝がん、乳がんなどのメジャーがんが、そのうちの約8割を占めています。メジャーがんについては、治療法が確立され、ゲノム医療の適用も進められています。一方、残りの約2割が、肉腫、小児腫瘍、脳腫瘍、中皮腫などの希少がんの患者さんになります。希少がんについては、奏功性評価法が無く、適切な治療薬も無いというのが現状です。

そこでクレオ・バイオサイエンスでは、適切な治療法が確立されていない希少がんに着目して、技術開発を進めています。私たちの技術を用いて、希少がんのモデルをチップ上に作り、薬の効き目を評価することから始めています。

具体的には、国立がん研究センターと共同研究で、患者さんから同意をいただいて提供されたがん細胞をチップ上で培養し、既に国内外で承認されている150種の抗がん剤を投与し、どの抗がん剤が効くのか、評価を進めています。2018年5月から国立がん研究センター内に当社研究員を常駐させ、希少がんの奏功性評価の技術開発を行っています。

現在、数名の患者さんのがん細胞を用いた検証は完了しており、私たちの技術で抗がん剤の効き目を評価できることを確認しています。今春から患者さんの数のベースを増やし、さらに検証やデータの蓄積を進め、今後2年かけて診断技術を確立させていきます。そして、3年目には臨床研究に入っていく計画です。

 

細胞の3次元培養法を自社開発

クレオ・バイオサイエンスでは、「Body on a Chip」のコンセプトをベースに日々試行錯誤を重ねる中で、「細胞の3次元培養法」を独自に開発し、2018年10月に特許を出願、同時に新製品『CEP-3D Spheroid Plates』を発売しています(図1参照)。


図1:3次元細胞培養用器材『CEP-3D Spheroid Plates』

 
図2は、私たちが開発したプレートを用いて3次元培養したヒト肉腫細胞を示しています。

図2:3次元培養したヒト肉腫細胞

『CEP-3D Spheroid Plates』では、図1に示すようなプレートのくぼみやディッシュの底部に、独自に開発したポリマーを塗布しています。この底部に塗布したポリマー(コーティング剤)が足場となり、細胞はマリモのような形の(科学用語ではスフェロイドと言う)かたまりで成育します。つまり、細胞が立体的に育つことで、ヒトの体の中の細胞組織をチップ上に再現できるのです。

図3は、従来法と当社3次元培養の比較を示しています。図の上段は従来のプレートで肉腫細胞を培養した結果を示しており、細胞が2次元的な敷石状に広がっていることがわかります。


図3:従来法と当社3次元培養の比較

これに対し、図の下段は『CEP-3D Spheroid Plates』で肉腫細胞を培養した結果を示しており、肉腫細胞がスフェロイド化していることがわかります。細胞組織が3次元的にスフェロイド化することにより、がん細胞をヒトの体に存在する形に近い形状で培養できます。また、スフェロイドを構成する細胞を遺伝子レベルで調べると、体内のがん細胞に近いものを培養できることが確認できています。このような細胞を3次元培養する技術が当社の大きな強みの1つであり、オンリーワンテクノロジーになります。

 

創薬にも貢献!

クレオ・バイオサイエンスの事業は、製薬会社をはじめ大手事業会社の皆さんからも注目していただいています。ライセンス契約を結ぶことで、私たちが開発した診断技術を利用すれば、希少がんの患者さんに個別化医療サービスを提供できるようになります。

また、製薬会社には創薬における時間と費用のコストを下げたいというニーズがあり、創薬プロセスの長い研究ステージにおいて、オープンイノベーションは欠かせないものになっています。そこで、私たちが国内外の大手製薬数社からお声がけいただいているのは、数十万種にものぼる新薬候補化合物のスクリーニングです。数十万の候補化合物から、新薬に使用できる可能性の高い化合物を数百に絞り込むことができるため、製薬会社は開発期間を短縮し、開発コストを大幅に下げることができます。

描く未来像は?

図4は、クレオ・バイオサイエンスの希少がん治療薬開発に関する、今後の事業展開を示しています。国立がん研究センターや製薬会社との連携をさらに深め、患者さん一人ひとりに最適な医療を提供する個別化医療や、これまで適切な治療薬のなかった希少がんの患者さんに向けて、効き目のある新薬をお届けできるようにしたいと考えています。


図4:希少がん治療分野の事業展開

一方、私たちの技術を応用し、チップの上にヒトの臓器モデルを作製するための研究も進めています。製薬会社には、新薬開発の際にマウスやイヌなどを用いる動物試験に換わり、ヒトの臓器モデルを使用して、薬の効果や副作用を確認したいというニーズがあります。私たちは、このような製薬会社のニーズに応えるため、臓器モデルの研究開発を行っています。例えば、腎臓モデルでは、ヒトの腎臓組織に近いものを作ろうとしています。具体的には、腎臓はさまざまな管が集まっていて、複雑な構造をしているのですが、私たちは腎臓の管をチップ上に再現しようとしています。

最後に、私たちが描くクレオ・バイオサイエンスの未来像を紹介しましょう。第1に、希少がんの中でも中皮腫や子供さんのがんなど、10種類くらいの比較的ニーズが大きながんの検査を、ルーチンで行う検査会社として成長していること。第2に、希少がんに効き目のある新薬を開発していること。第3に、臓器モデルを作製し、その技術を製薬会社へライセンス販売していること。
このような未来像を実現させるために、一歩一歩着実に前進していきたいですね。